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超重神山さんDESTINY

超重神山さんDESTINY

第10話 アトランティスの星空

第10話  アトランティスの星空

黒い服の人たちが泣いている。

みんな、顔を知らない人ばかり。

私も黒い服を着て黒い服の人たちが囲んでいる棺の前に立っている。

そこに眠っているのは・・・・・・・。



「・・・・・・・・最悪・・・」

自室のベットの上でサリアは眼を覚ました。朝っぱらから嫌な夢を見た。
不機嫌そうな表情のままベットから起きあがりクローゼットから服を取り出して手っ取り早く着替え部屋を出る。

「あら、おはよう」

部屋を出た直後、シャイルに声をかけられる。彼女の部屋は昨日の一件の後、サリアの部屋の隣に移っていた。

「ああ、おはよう」

「どうしたの?なんだか、機嫌悪そうだけど」

シャイルの言葉に驚く。なんだか見透かされているような感じがする。サリアは平静を装い笑顔で答える。

「そんな事ないわ。さて、朝ご飯食べに行こうっと」

それだけ言って食堂へと歩いていく。

「・・・・言いたくない・・か。まぁ、それもそうよね」

なんとなくサリアの考えがわかったのでシャイルはそう呟き自分も食堂へと向かう。
誰にでも言いたくない事の一つや二つはある物だ。それを、自分はよく知っている。

「私も・・・そうだしね」



「あぁぁ・・・・・・だりぃ・・・・・・」

食堂のテーブルの上にマグナは突っ伏していた。昨日は敵の夜襲などのせいで疲れ
がたまり今朝も軍に入った故に朝早くにたたき起こされ結局ろくに眠れなかった。ちなみに睡眠時間は5時間である。

「せめて、あと2時間は寝かせて欲しかったぜ・・・・」

「軍に入った故に遅眠早起きは宿命だからなぁ・・・・諦めな」

マグナの隣に座っているゲイルはそう言いながら朝食の目玉焼きにソースをかけ食べる。
ちなみに彼はマグナの睡眠時間の半分も寝ていない。

「お前はよく平気でいられるな・・・・・」

「なれってのは・・・怖いもんさ」

「あ・・・さいですか・・・」

マグナは先輩からの有り難い助言。「早くこの不規則な生活になれろ」と言う噛み締めたくもない言葉を聞きさらに脱力した。

「ってか、とっととメシ食っちまえよ。もたないぜ?」

ゲイルが言う。マグナは自分のトレーにおかれた朝食。目玉焼きとハム3枚。サラダ。白いご飯にまったく手を付けていない。

「食欲が出ないんだよぉ・・・・・」

「出なくても食え、食わないと午前中にお前は飢え死にだ。俺のサイフの中身全部賭けても良い」

「・・・・・・・・・・・・・」

一体、軍の仕事って何をするんだろう とマグナが疑問に思ったのは言うまでもない。
しかし、一日三食しっかり食べるのは当たり前である。食欲が無いながらも箸を手に取り食事を始めた。

「二人とも、おはよ」

食堂にはいってきたサリアが二人に挨拶する。ゲイルはいつも通りの調子で挨拶を返しマグナはいかにもだるそうな感じで 挨拶を返す。

「あらあら・・・元気がなさそうね。大丈夫?」

サリアの後にはいってきたシャイルがマグナに言う。

「寝不足でねぇ・・・・・・だるくてしゃーねぇよ」

「5時間しか寝てないんだとよ」

ゲイルがマグナの睡眠時間を言う。それを聞いたサリアは呆れた様子でため息をつく。

「はぁ・・・あれだけの騒ぎの後、5時間も寝れれば良い方よ。私なんか3時間しか寝てないんだからね」

その言葉にゲイルも「その通り」といって頷く。マグナはますますだるそうに体をつっぷらせる。シャイルは苦笑混じりにその様子を見ている。

「まぁ、つい最近まで民間人だったんでしょ?それなら仕方ないと思うわ」

シャイルが言う。以前も作業用MSパイロットではあったが前は軍ほどハードではないのでなれてないのは無理はない。

「シャイルも余裕そうだな・・・・」

「ええ、前に仕事の関係で・・・・3日ぐらい不眠不休だったことあるしね。それに・・・ここに来る前にあいつ等に捕まってて・・・丸二日ぐらいは眠らされずに拷問されてたし・・・」

「「「嫌・・・もう良いです・・・ハイ」」」

平然とそういう事を言ってのけるシャイルに三人は少し複雑な表情を見せる。裏の世界で生きてきたのは伊達じゃないという事らしい。

「ま、辛いのは最初だけだから我慢しなさいよ」

「ヘイヘ~イ・・・・・・」

マグナはだるそうに答えた。



格納庫では昨日の戦闘で捕獲したティターンの修理と解析がおこなわれていた。

「機動性重視の設計に汎用性を高めた武装・・・・・中々にバランスの良い機体だと思います」

整備兵の言葉にアキラが頷く。

「んで・・・・どこの海上都市が造った機体なのかはわかるか?」

「いえ・・・・・パーツやら装甲材やら・・・何処が製造した物かわからなくなってますね・・・」

「文字通り、アンノウンってか・・・・厄介なMSだな・・・えっと・・ティターンだっけか、名前?」

「ええ、とりあえず使えるように修理しておきますけど」

「ああ、せっかくあるんだし・・使える物は使わないとな」

そこでアキラはエーギルの方へ視線を移す。キラーハンターにやられたダメージが酷く。昨日の夜から修理をおこなっているがまだ完全に修理が終わっていない。

「エーギルの修理はどれぐらいかかる?」

「そうですねぇ・・・・両腕を一から造らないといけませんし・・・・早くても5日から一週間ですね」

「そうか・・・・にしても、こっぴどくやられたもんだな・・」

エーギルを見上げながらアキラが呟く。現在のアトランティス所有のMSの中でもっとも装甲を厚いエーギルがこれほどのダメージを受けるほどの敵がいるとなると恐ろしくなる。

「なんか、鮫みたいな機体だったそうですが・・・・」

「鮫だぁ?MSじゃないのか・・・・なら、なんだ・・・・」



食堂を出たマグナはあくびをかみ殺しながら自販機で無糖コーヒーを買い飲む。

「あ~、少しは眠気覚ましになったかな・・・・にしても、苦っ」

正直、苦い物は嫌いな部類に入るマグナは眠気覚ましにあえて購入したコーヒーを一気に飲み干すとリサイクルボックスに投げ捨てる。

「さて・・・・さっさと格納庫へ行きますか」

食事が終わったらサリアに格納庫へ来るように言われていたマグナはその足で格納庫へと歩いていく。格納庫は今いるエリアの3ブロック下にある。食後の運動をかねて階段を使い降りようと廊下を曲がる。
ドンッ と真正面から誰かがぶつかってきた。

「・・サリア?」

「あ・・・マグナ・・・」

ぶつかってきたのは格納庫へ来いと言ったサリア本人だった。

「なんで此処にいるんだ、格納庫じゃなかったのかよ?」

見ると、サリアの目から何かが流れている。

「なんだ・・・・泣いてるのか?」

「何でもないわよ・・・ほっといて!」

怒ったように叫ぶとそのまま廊下の向こうへと走り、消えていった。

「な・・・何だよ・・オイ」

わけがわからずにサリアの走ってきたほうを見るとそこに一人の男が立っていた。それは、アトランティス代表のグレンだった。

「ファーレス代表・・」

「君は・・・マグナ・ルーヴィルだったか。いや・・・見苦しい物を見せてしまったな」

グレンは自嘲気味の笑みを浮かべて言う。

「いや・・・なんか、あったんですか?」

「・・・少し・・な。彼女と喧嘩してしまっただけだよ」

「はぁ・・・まぁ、親子なんだし喧嘩ぐらい・・・」

「親子・・・か・・・彼女は、そうは思ってない無いだろうな」

グレンが独り言のように呟く。

「そう思ってないって・・・・」

「色々と複雑なのさ・・・親子といってもね。では、私は仕事があるのでね」

グレンはそう言って階段を上っていく。マグナはグレンの言った言葉が少し気になったがとりあえずサリアを探そうと彼女が走っていった廊下の方へと歩いていった。
廊下の先にある昇りの階段を駆け上がっていく。その階段の一番上、アトランティス中央塔の最上階である展望台にサリアはいた。

「おい、サリア?」

「っ!?マ・・マグナ・・・」

後ろから声をかけられたサリアは驚いて後ろを振り向く。

「驚かさないでよ・・・もぉ」

マグナの姿を確認するとはぁと言うため息と共に目をこすりながら呟く。

「泣いてたのか?」

「なっ・・泣いてなんかないわよ!!」

マグナの問いにサリアが怒り丸出しで反論する。どうやら図星らしい。

「なぁにを強がってんだかね。泣いてるなら泣いてますって認めろよ」

「アンタね・・・・デリカシーって物ないの?」

「・・・・・・・・自分じゃよくわからねぇ」

「・・最悪」

そう呟きサリアはマグナに背を向け海を眺める。マグナはため息をついてからサリ
アの横に立ち海を眺め始める。

「へぇ・・・結構、いい眺めじゃねぇの」

見渡す限りの蒼い空と海。遥か彼方に広がる水平線が見慣れているはずなのだがこ
れほどの高さから見るとなんだか違う光景に思える。

「でしょ。嫌なことあるとよく此処に来るのよ・・・」

「嫌な事ね・・・・代表となんかあったのか?」

マグナが疑問に思っていた事を口にする。サリアは表情を少し曇らせてうつむき答える。

「まぁ・・・・色々・・ね」

「親子喧嘩でもしたのか? まぁ、俺の関わるような事じゃな」

マグナが言い終わるより早くサリアが呟き言葉を遮る。

「親子じゃない・・・」

「え・・・?」

「あんな奴・・・・父親じゃない・・・・」

そう言いながらサリアの拳が彼女のグレン・ファーレスに対する感情を表すように振るえている。

「・・・・・・・」

その様子を見たマグナは言葉を詰まらせる。サリアはしばらくしてからふぅっとため息をつき笑顔でマグナに言う。

「ゴメンね。なんか雰囲気暗くしちゃって」

「いや、別にいいけどよ・・・」

マグナが答える。サリアは少し考えてからマグナに言う。

「ねぇ・・・今日の夜・・此処にまた来てくれない?」

「夜? まぁ・・・・いいけど」

「そう。じゃ、今日の夜11時ぐらいに此処でね」

それだけ言ってサリアは階段を下りていき展望台を後にした。

「なんだ・・・アイツ?」

その行動に疑問を少々感じつつマグナも展望台を後にした。



その日の夜。マグナは約束の時間丁度に展望台へと昇ってきた。そこにはすでにサリアの姿もあった。

「やっほ~」

「おう。ってかなんだよ、こんな時間に」

「ああ、マグナに見せたい物があってさ・・・・外見てよ」

そう言ってサリアは展望台の外を指さす。マグナはその先へと視線を移す。
そこに広がっていたのは昼間見た光景とは違い夜の空と海の闇に夜空に広がる星の光が海面に映し出される。かなり美しい光景が広がっていた。

「はぁ・・・・スゲェ・・・」

マグナは素直に感想を口にする。夜の海に出る事はなかった彼にはこの光景は初めて見る物で純粋に綺麗だと思った。

「夜の此処で海眺めるのが、私好きなんだ。嫌なことあると良く来るの」

「へぇ・・・・」

「ついでに言うと・・・此処に人連れてきたのはマグナが初めてなんだけどね・・」

サリアが小声で呟く。

「へ?なんか言ったか?」

「別に、な~んにも」

聞きそびれたマグナが質問するがサリアは軽く流す。

「なんだよ、それ・・・・」

呆れた様子でマグナが言うが「まぁ、いいか」と納得し聞かない事にした。
二人はそのまま、夜の星空をしばらく眺め続けた。


続く



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